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70ー80年代ロック名曲セレクション

1970ー1980年代の洋楽ロックの名曲を独断と偏見でご紹介。この曲達を聞かずして、ロックを語ること無かれ。

Leave Me Alone 【AIRPLAY】 (1980)

収録アルバム "AIRPLAY"(邦題:ロマンティック)

 

 

今回から3回連続で「ジェイ・グレイドン祭り」を開催します!

ジェイ・グレイドンは、アメリカ西海岸を代表するプロデューサー、ギタリストで、その手腕を買われて様々なミュージシャンのアルバムをプロデュースし、またギタリストとしてレコーディングに参加しています。この頃の洋楽が好きな方なら、きっと一度はその演奏を耳にしているはず。また、日本のミュージシャンのアルバムでも数多く演奏しています。

その彼が、やはりアメリカを代表するプロデューサーでありスタジオ・ミュージシャンであるデヴィッド・フォスターと意気投合し、立ち上げたプロジェクトが "AIRPLAY" であり、このアルバム1枚のみを "AIRPLAY" として発表しています。実力派ミュージシャン二人が(彼らが信頼をおくミュージシャンを集めて)作ったアルバムなので、完成度が低いわけがありません。基本は "AOR" と呼ばれる洗練された都会的なロックなのですが、ちょっと突き抜けた曲あり、ホーン・セクションの効いたファンク調の曲あり、美しいバラードあり、と、何度でも聴くことのできる、名盤中の名盤だと思います(アース・ウィンド&ファイヤに提供したバラードの名作 "After The Love Is Gone" もセルフ・カバーしています)。

ジェイ・グレイドンのギターは、程よくオーバードライブのかかった、とても円やかで耳障りの良いサウンドです。ソロ・フレーズも決して奇抜ではなく、超早弾きという訳でもなく、非常に滑らかな運指でスケールの高音から低音までをスムーズにアップ・ダウンしていくのが印象的です。それだからこそ、時折聴かせるトリッキーなフレーズが効果的なのでしょうね。

このアルバムでも、そんなジェイ・グレイドンのプレイが充分に堪能できます。速い曲でのリズミカルで疾走感のあるフレーズ、バラードでの泣きのフレーズなど、どれを取っても素晴らしい演奏です。また、何重にもダビングされたギター・オーケストレーションも、随所で聴くことができます。

「この曲」という1曲を選ぶのが非常に難しいのですが、ジェイ・グレイドンの遊び心も感じられる、"Leave Me Alone" を選んでみました。

テンポの速い、"AOR" と呼ぶにはノリのいいロック的な仕上がりの曲ですが、ボーカルの裏でチョッパー的な音を出したり、間奏のギター・ソロでトーキング・モジュレーターを使ってるあたり、グレイドンにしては珍しくいろいろやってくるなーという感じですね。それでも、ボーカルの合間のフィル・インではしっかりグレイドン節を聴かせてくれるのがとても嬉しいです。

その後のロックのアルバム作りに多大な影響を与えたと言われるこの1枚、まだお聴きでない方は、ぜひ!

次回もまた、ジェイ・グレイドンの名演について書きます!

 

Don't Tell Me You Love Me 【NIGHT RANGER】 (1982)

収録アルバム "Dawn Patorol"

 

 

アメリカ西海岸を代表するロック・バンド "Night Ranger" のデビュー・アルバム "Dawn Patorol"のヒット・チューン "Don't Tell Me You Love Me"です。

軽やかなギターのリフから始まる、疾走感タップリでノリノリのアメリカン・ハード・ロック・ナンバーです。このバンドの特徴は、何と言ってもブラッド・ギルスとジェフ・ワトソンというスタイルの異なる二人のギタリストが絡み合うツイン・リード・ギターなんですが、この曲でもその魅力が充分に発揮されています。ギター小僧にはたまらない曲ですね(斯く言う私も若い頃には一生懸命コピーしたものです)。

アルバム全体を通して、このツイン・ギターのリフをメインに、疾走感・開放感あふれる痛快なハード・ロックが展開されています。どの曲を取ってもハズレがなく、アルバムとしての完成度も非常に高いものだと思います。

さて。

洋楽フリークには超有名な話ですが、シブがき隊の「ZOKKON命(ラブ)」のイントロは、この "Don't Tell Me You Love Me" のイントロのパクリです。

ここで「パクリ」の是非について問うつもりは全くありません。

「パクリ」なのか、「オマージュ」なのか、「インスパイア」なのか・・・、その線引きは非常に難しいところで、どこまではいいとか、どこからは悪いとかという議論も散々繰り返されてはいると思うのですが、間違いなく言えるのは、日本の音楽界(特に歌謡曲、ニュー・ミュージック、ポップスといったジャンル)は、その製造工程に関わるコンポーザー、アレンジャーといった人達が、(綺麗な言葉で言えば)洋楽のエッセンスを上手く取り入れて、日本流(自分流)にアレンジすることを学習しながら、発展してきたのだということです。

そりゃまあ、製造者の意思かどうかはわかりませんが、似ちゃうこともありますよね。

元曲探し、とか、元曲との聴き比べとか、そんな洋楽の楽しみ方もアリだと思うので、それはそれでよろしいのではないかな、と思う次第であります。

 

Dance On A Volcano 【GENESYS】 (1976)

収録アルバム "Trick Of The Tail"

 

 

イギリスのプログレッシブ・ロック界の大御所・"GENESYS"が1976年に発表したアルバム"Trick Of The Tail"のトップを飾る曲、"Dance On A Volcano"を紹介します。

GENESYSは、1969年にデビューするのですが、当初は奇才ピーター・ガブリエル主導のもと、アート色の強いプログレッシブ・バンドとして人気を博していました。1975年にそのピーターが脱退すると、当時ドラマーだったフィル・コリンズがボーカルを担当することになり、よりリズム・ワークに重きを置いた新生GENESYSがスタートするわけです。

この"Dance On A Volcano"は、そのリズム・ワークが素晴らしい一曲です。速い7拍子と遅い7拍子が交互に現れる、非常に複雑で難しい曲なのですが、そんなの大した問題ではないとばかりに、演奏、ボーカルともにノリ良くスムーズに聴かせてしまうあたりが、さすが実力派、老舗プログレバンドといったところでしょうか。後半のドラマチックな盛り上がりを聴かせる構成も素晴らしいです。

しかし、この曲の真骨頂はライブでの演奏ですね。

収録アルバム "Seconds Out"

 

 

このライブ・アルバムでは、"Dance On A Volcano"から"Los Endos"へのメドレーを聴くことができます。スタジオ盤よりも、ダイナミックで熱のこもった演奏は、ライブならではですね。

特に、聴きどころは"Los Endos"に突入したあたりからですね。それまでの(ライブのサポートメンバーである)チェスター・トンプソンのドラムが右手から、そしてマイクをスティックに持ち替えたフィル・コリンズのドラムが左手から聴こえてきて、ツイン・ドラム構成になるのですが、一糸の乱れもないリズムの正確さに驚愕し、迫力ある圧倒的な演奏にシビレます!

ちなみに、ツイン・ドラムの演奏は、同じアルバムの"Firth Of Fifth"でも聴くことができるので、こちらもぜひ!

 

We Built This City 【STARSHIP】 (1985)

収録アルバム "KNEE DEEP IN THE HOOPLA"

 

 

"STARSHIP"の全米NO.1ヒット・チューン、"We Built This City"です。

STARSHIPというバンドは、本を正すと1965年にデビューした「ジェファーソン・エアプレイン(Jefferson Airplane)」というバンドが大元になっており、それがメンバー・チェンジやなんだかんだの結果「ジェファーソン・スターシップ(Jefferson Starship)」というバンドになり、その後またメンバー・チェンジやなんだかんだの結果、STARSHIPにたどり着いた、という歴史の古いバンドです。

ジェファーソン・エアプレイの頃は、サイケデリック・ロックの代表格として捉えられており、ジェファーソン・スターシップでは一転して骨太のアメリカン・ハード・ロックバンドとして活躍し、何曲かのスマッシュ・ヒットも飛ばしました。

STARSHIPとしてはこのアルバムがデビュー作なのですが、音楽性は更に変化して、当時の最先端のエレクトリック・ポップを全面的に取り入れて、商業的には大成功を収めています。長い歴史の中で培われてきたバンドとしての実力が、路線変更で一気に花開いた、というところでしょうか。

この"We Built This City"(邦題:シスコはロックシティ)は、アルバム"Knee Deep In The Hoopla"のトップを飾る曲で、「俺達はロックンロールでこの街を作り上げたんだ!」と声高らかに歌い上げる、爽快でゴキゲンなポップ・ロックです。

このアルバムからは、さらに珠玉のバラード"Sara"も全米NO.1に輝きました。それ以外の曲についても、1曲1曲の完成度が高く、まさに傑作と呼べるアルバムとなっています。

バンドの特徴として、胸のすくようなハイトーン・ボイスの男性ボーカル(ミッキー・トーマス)と、男性に負けないハリと迫力ある女性ボーカル(グレイス・スリック)のツイン・ボーカルであることがあげられるでしょう。どの曲も、ボーカル・パートが聴きごたえがあり、本当に素晴らしいです。

 ちなみに、ユーミン松任谷由実)が好きな女性ボーカリストとしてグレイス・スリックの名前をあげていますね。アルバム「昨晩お会いしましょう」には、「グレイス・スリックの肖像」という歌が収録されています。

 

Ride Like The Wind 【CHRISTOPHER CROSS】 (1980) 

収録アルバム "Christopher Cross"

 

 

1980年に日本でも大ヒットした、Christopher Crossの名曲、"Ride Like The Wind"です。

風の音とともに厳かに始まるイントロが、何かを予感させます。そこにドラムが加わり、ギター、ピアノがコードを歯切れよく刻み始め、軽快なロック・チューンが展開されます。クリストファー・クロスの透き通るようなハイトーン・ボイスは、実は犯罪者が南へ風のように逃亡するという詩と相まって、軽快な中にもピリッとした緊張感をもたらしています。そして、サビ後のスキャットのカッコイイこと!

1970年代後半から1980年代にかけて、"AOR"(Adult Oriented Rock)というジャンルの音楽が注目を集めました。直訳すると、「大人志向のロック」でしょうか。勢いが頼みの若いロックとは一味違い、例えば、爽やかな初夏の陽射しの中、海沿いの国道を車で走る時の爽快で上質の風のようなロックであったり、あるいは、都会の夜に高層マンションの上階からネオンの街を見下ろした時にかかっている癒しのバラードだったり・・・。TOTOボズ・スキャッグス、エアサプライ、ボビー・コールドウェル、そしてクリストファー・クロスなどの実力派ミュージシャン達が素晴らしい曲を奏で、大人な世代の人達が耳を傾けたものです。

時代的な背景としては、バブル前の高度経済成長期で経済的・精神的にゆとりのある若い大人達が増えて、それまでの若い頃とは違ったライフスタイルを追い求めて時間やお金を費やしていた時代だと言えるでしょう。

また、音楽的な背景としては、テクノロジーの発展によるシンセサイザーの普及、発達が要因としてあると思います。シンセサイザーは、1970年代前半にはアナログのものがレコーディングでは使われていたようですが、1970年代後半になると、デジタルのシンセサイザーが登場し、瞬く間に音楽業界に普及していったようです。デジタル・シンセサイザーの普及により、より複雑な、より多様な音色の生成が、より簡単に、より安価に実現できるようになったために、効果的かつ繊細なサウンドが"AOR"の様々なシーンの演出効果として用いられるようになり、素晴らしい曲達が生み出されてきたのではないか、と思います。

ちなみに、ですが、1970年代にY社から「CP70」「CP80」というエレクトリック・グランド・ピアノが発売されています。通常のピアノよりも電子的な煌びやかな響きで、通常のピアノの代替というよりは、むしろ独立した新しいひとつの楽器として、現代でも多くのミュージシャンに愛用されています。この楽器の登場も、"AOR"隆盛のひとつの要因ではないかと密かに考えております。

また改めて、"AOR"の名曲達も順次ご紹介していきたいと思います。

Armageddon It 【DEF LEPPARD】 (1987)

収録アルバム "HYSTERIA"

 

 

洋楽ロックと「空耳」とは、切っても切れない深~い縁がありまして・・・。

「空耳」先行で、「あ、この空耳の元曲を聴いてみよう!」と思って聴いてみたら、逆にハマってしまった、ということが、私の場合にはよくあります。

"DEF LEPPARD"もそのひとつです。

彼らは、実に綺麗な日本語を発音するのです(いや、日本語は言ってないって)。

この"Armageddon It"では、サビのところで

   海女、下痢で 海に出れねえ 今朝も下痢で

  (Armageddon It! Really Gettin' It -Yes, Armageddon It!)

と歌っているように聞こえますので、ぜひ一度、聴いてみてください。

「空耳」は別としても、収録アルバム"HYSTERIA"は彼らのアルバムの中でも最高傑作だと思います。初期の頃は、少々無骨で野暮ったい感じだったのですが、このアルバムでは、非常に洗練された、大人のハードロックを聴かせてくれます。

特に2曲のバラード"Hysteria"と"Love Bites"は、絶品です!

 

Heat Of The Moment 【ASIA】 (1982)

収録アルバム "ASIA"

 

 

前回からのジョン・ウェットンつながりということで、"ASIA"の"Heat Of The Moment"です。

"UK"解散後のジョン・ウェットンが、実績・知名度ともに文句なしのメンバーを集めて結成したスーパー・グループ"ASIA"のデビュー・アルバムのオープニング・ナンバーで、全米ロックチャートNo.1を記録したヒット・チューンです。

イントロのギターのリフだけで、もうワクワク感がハンパないですね。ジャンルとしてはハード・ポップ?各メンバーが実績を残した頃のプログレッシブ・ロックの緊張感はないのですが、皆が余裕を持って楽しげに演奏している姿が目に浮かぶような、爽快な曲です。間奏は、一転してテンションをグッと押さえて、ギター、キーボード、ベースがメロディアスに絡み合い、そしてまたサビへと向かって盛り上がっていく・・・ツボを押さえた見事な構成がたまりません!

当時、ASIAを始めとして、BOSTON、JOURNEY、TOTO、FOREIGNERといった実力派のバンド達が、軽快でキャッチーなロック・ナンバーを世に送り出して、商業的な成功を収めました。これを「産業ロック」と揶揄する風潮がありましたが、それの何が悪いというのでしょう!実力、才能のある素晴らしいバンドだからこそ、ヒットする良い曲が書けるのであり、それが大衆ウケを狙ったものだとしても、良い曲であることに変わりはありません。「産業ロック」、大好きです!

"ASIA"は、スーパーバンドであるが故の短命さを危惧していたのですが、メンバーチェンジを繰り返しはしたものの、素晴らしい曲を数多く発表しています。また機会があれば、他の曲も紹介したいと思います。